【しげをサイエンス】脳神経系の再生は可能!?

2020年12月10日

購読者の皆様、本日も当コラムにごアクセスいただき誠にありがとうございます。

しげをです。

本日のテーマは『脳神経系の再生は可能かどうか』というテーマで切り込んでいきます。

これが可能であれば、本格的に人類の平均寿命が100歳以上に上がるのではないかと思います。

では、早速参りましょう。

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1、ヒトの神経系について

皆さんはヒトの神経系が中枢神経系と末梢神経系から成り立っていることはご存じだろうか?中枢神経系は脳内と脊髄(つまり脳と背骨のところ)の神経系からなり、末梢神経系はそれ以外の身体に張り巡らされている神経系のことである。この二つの神経系には大きな違いがあり、中枢神経系では神経再生ができないが、末梢神経系では神経の再生が可能であると言われてきた。つまり、手や足などの末梢神経部分の神経系を切断しても自然につながるが(これは我々が日常経験していることである)、脳神経部分(または脊髄部分)の神経回路を一度切断してしまうと、自然再生はできないということを意味している。

しかし最近になって、中枢神経系は本当に再生(一度切れたものが再度つながる事)できないのであろうかという疑問が上がっている。理由は寿命が延びたことによる脳神経死滅に関する疾病(認知症、パーキンソンン病、など)が非常な勢いで増加しており、これを治療する有効な方法がみつからないからである。脳神経細胞そのものを再生できなくとも、中枢神経系の中で神経回路を再結合することができればアルツハイマー病などに対する有力な治療法になりうるからである。

2、何故、中枢神経系の再結合は不可で末梢神経系の再結合は可能であるのか?

この理由は神経細胞の周囲に存在しているグリア細胞(オリゴデンドロサトとグリア細胞が代表的なもの)の違いに起因していると言われている。中枢神経の周りにはオリゴデンドロサイトが存在し神経細胞のなかで電気信号を伝える電線の役割を果たしている軸索というものの外周に、絶縁性の高い髄鞘(ずいしょう)という絶縁膜を形成しているのである。これにより、神経細胞内の電気信号は漏れることなく高速で伝導することができるのである。このようにオリゴデンドロサイトの役割は髄鞘は生成することであり、軸索自身を中枢神経内で生成・成長させるものではないと言われてきたのである。

一方、末梢神経周囲のグリア細胞はシュワン細胞である。シュワン細胞は絶縁性の高い絶縁膜を末梢神経軸索の外周部に形成できないが神経細胞内の軸索を生成・成長をさせることは可能なのである。

しかし、何故シュワン細胞には神経再生ができて、オリゴデンドロサイトでは神経再生ができないのかは長い間謎であったが、2000年にこの謎が解かれた。

中枢神経系の神経細胞であろうが、末梢神経系の神経細胞であろうが神経細胞としては同じである。再生に違いが出るのは神経細胞の周囲に存在するグリア細胞の違いにより、軸索の生成・成長が異なることはすでにのべた。オリゴデンドロサイトは別のグリア細胞から形成されるノゴといわれる分子(化学誘引物質と呼ばれ、非常に大きな効果を発する)により、軸索伸長が阻害されるということが分かったのである。つまり、本来はオリゴデンドロサイトは軸索を成長させ中枢神経系の中の神経細胞を一部再生する能力は有しているのであるが、ノゴの存在により神経再生ができなかったのである。

3、中枢神経系軸索を再生する方法

中枢神経系の神経細胞自身は再生できないが、神経細胞の電線部分である軸索であれば、上の議論から可能である。現在までに、二つの方法での成功例が報告されている。

①バイパスでの回路の再生

中枢神経系で神経回路が切断する事故は頻繁に発生する。一例として、中枢神経の中視覚神経回路が切断されたとき、別回路(バイパス)として末梢神経系の一つである坐骨神経の移植片を片方は網膜に別端は上丘(網膜からの信号が軸索を介して集合する場所のところに結合したところ、視神経が網膜から上丘に自然に形成され、切れたし神経回路のバイパスとして機能することが確認された。ここでのポイントは末梢神経である坐骨神経片を中枢神経の中に移植し末梢神経の中に視神経バイパスを形成したことであった。末梢神経の移植組織の中にはシュワン細胞が豊富にあるのでその中を軸索が成長していったことによるのである。

②抗ノゴ抗体による再生

中枢神経軸索が再生されないのはノゴという誘引物質が中枢神経軸索の再生を抑制しているからだと2で説明した。そこで、ノゴの働きを抑止する物質を注入することができれば、中枢神経においても軸索の生成・成長を可能に出来ると考えられた。そのような目的で誘引物質が探索され抗ノゴ抗体(IN-1)というものが発見された。これを、脊髄を損傷させたラットに注入した所、切断された軸索の5%が再生されたとの事である。5%の回復ではあるが、明らかな機能回復が実現できたのである。

 

4、まとめ

以上のように、中枢神経系が損傷や死滅したとき、神経細胞自身を再生することはできないが軸索を再生することは3の①②で示した方法で可能である。神経細胞自身の消滅をこの軸索再結合で何とか補えることができれば、機能も回復する可能性はある。中枢神経の中の神経細胞再生そのものと一緒に軸索再生という手法は脳神経系の再生という中で、重要な手段として採用される可能性がある。

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