【しげをサイエンス】ヒトの能力増強法について

2020年12月18日

購読者の皆様、本日も当コラムにごアクセスいただき誠にありがとうございます。

しげをです。

本日のテーマは『ヒトの能力増強法について』というテーマで切り込んでいきます。

皆さんもしたいですよね、パワーアップ。人として生まれたからには皆必ず成長意欲というものは多かれ少なかれあるものです。

今回はそんな人間の”成長”について下記に述べているので早速見ていきましょう。

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1、超人的な記憶力を持つS

1920年代にロシアに超人的な記憶を有するS(呼び名であり、本名は不明)と呼ばれる男がいた。

一列に70もの文字が書かれたものを瞬時に記憶し、また、何年たってもその時の文字の並びを思い出すことができた。

心理学者であるルリア博士がこの超人的記憶の原因を何年にもかかって調べた結果、

①フットグラフィックメモリー:一度見たものを写真を撮るように脳の中に貯蔵でき、その写真を脳内で見返すことで文字を再現できるという記憶力のこと。

②共感覚:通常ではある種の刺激で一つの感覚が起こされるが、共感覚ではこの刺激で別の感覚までもが引き起こされることを言う。例えば音を聞いた時、聴覚だけではなく、色のついた光の斑点が見えたり、臭いがしたりする感覚、つまり、視覚や嗅覚までもが引き起こされる経験を言う。

以上の結果が判明した。

凡人であるわれわれも①のようなフォットグラフィックメモリーを電話番号の暗記の時に使っているし、②の共感覚は我々が一連の何かを記憶する時、何かに関連付けて記憶するというテクニックに使っている。しかし、我々の能力はSに比べるととるに足りないものであり、何が神経回路において、そのような強力な記憶力を可能にしたのかは興味あるところである。

2、棒高跳びで6mを超えたブブカ

次は身体能力の成長について見ていこう。

セルゲイブブカ(現在のウクライナ出身であるが当時はソビエト)は棒高跳びで人類最初に6mをを超えた陸上選手である。棒高跳びの選手でありながら100mを10秒の前半で走り、高い身体のバランス感覚を有していた。

ブフカの練習の半分は器械体操の練習であった、ブブカ自身”棒高跳びの半分は陸上走で半分は器械体操だ”と言っていた。

当時、通常の棒高跳び選手は棒高跳びの練習しかしていなかったが、ブブカは器械体操で培われる平衡感覚こそが棒高跳びのトップの位置で最も重要な要素であるということを見抜いていたのである。

走るときの神経回路と器械体操での神経回路は異なるものであるが、ブブカの例は二つの神経回路(つまり、二つの能力)を同時に高めることが能力向上に如何に重要であるかということを示している。

3、言語における脳神経回路の再構築

1,2で脳における神経回路がヒトのいろいろの能力のであることを示したが、次に言語における脳神経回路のすばらしさについて示す。

言語は会話での音声という外部情報を外耳から収集し、大脳側頭葉のウェルニッケ野で作られる。その後、ブローカ野から前頭葉運動野に言語情報が送られそこから舌、唇、喉、声帯などの身体器官を使って発声し言語を相手に伝えている。このように言語を発する時、脳内のいくつもの神経回路領域(聴覚ー>ウェルニッケ野→ブローカ野→運動野→身体器官)が繋がったものを使用しているのである。

しかし、病気や事故などでセンサー部分(聴覚部分)が機能しなくなった時(内耳の破壊など)、外部音声情報が入らなくなった時に音声発生の神経回路は切断されたので(外部情報と聴覚の回路切断)、言語は発することができなくなるのであろうか?現実はそうではない。難聴の人で言語を発生しているヒトはたくさんいるのである。一番良い例が手話である。この時、難聴の人は手話通訳者に言語を翻訳してもらいそれを見てその情報を視覚野(聴覚野からではない)からウェルニッケ野に入れ通常の神経回路から言語を発しているのである。

他の例として、点字がある。視覚異常の人でも点字を触ることにより体性感覚(触覚)野から外部情報を聴覚野にあるウェルニッケ野に取り込み、以後の神経回路を使って言語を発生することはできるのである。この場合の神経回路は指(触覚)->体性感覚野ー>ウェルニッケ野ー>→ブローカ野ー>運動野→身体器官→発声という順になる。

このように、ある目的で機能している神経回路が何らかの理由で機能しなくなった時に、別の神経回路とつながることにより以前の神経回路で可能であったことに近づこうとするのである。これらの脳神経回路の再構築を健常人の能力向上に利用できないものであろうか?

4、能力向上法としての脳内神経回路の再構築

ヒトは脳の機能を回復させるためにリハビリを行うが、通常人は自分自身の体力向上のためにトレーニングを行う。これは一種の脳内神経回路の再構築と言えるであろう。脳はやろうと思えばいかようにもその神経回路を組みなおし(これは脳の可塑性と言われている)、目的に沿うような回路に変化しようと努めるのである。

1でのべたSの驚異的記憶力は我々が使っている記憶のための神経回路以外にフォトグラフィックメモリー用の神経回路、記憶に付随する共感覚回路(視覚、聴覚、臭覚、触覚回路など)を総動員しているために成し遂げられたのではないかと思っている。

我々も、それぞれを意識して訓練することにより、脳内の神経回路を強化(使っていなかった回路を訓練によって使えるようにすること)でき、ある程度の記憶力強化はできるのではないかと思われる。

ブブカの場合も器械体操の訓練により、通常の陸上選手では保持できないようなトップ位置での身体制御を可能とするような運動神経回路が脳内に出来上がり、世界記録が可能となったのであろうと考えられる。

5、まとめ

以上のことをまとめると以下のようになる。

<1>ヒトの能力とは脳力のことであり、もっと、詳しくは脳内の神経回路の性能のことである。

<2>この神経回路は何かの目的のために機能し、多くの脳内の領域をつないでおり、どこか一つでも切断されると回路は機能しなくなる。

<3>神経回路が切断されて機能しなくなっても、脳は別の脳の領域とこの切断された神経回路をつないで機能の回復を図ろうとする。つまり、脳には脳神経回路を再構築する機能が存在する。

<4>脳再構築機能は脳障害者にはリハビリという形で、健常者にはトレーニングという形で利用されている。

<5>通常人が何らかの目的のために、能力向上を意図し脳再構築を利用しようとするとき、それまでとは別の脳神経回路(例えばそれまでに使っていない感覚回路など)を目的の達成のための訓練に入れていくことは有意義であるとおもわれる。ブブカの例で分かるように、棒高跳びの練習だけでは棒高跳びの神経回路しか強化できないが、器械体操のような練習を取り入れることにより異なる神経回路(平衡感覚を司る神経回路)を大きく強化できるのである。(驚異的能力を有する人は多分、このような多くの神経回路を能力発揮の中で活動させていると思われる。)

最後になるが、能力と呼ばれるものは記憶力、計算力、推理力、運動能力など数多くあるがすべてが脳の神経回路に依存している。最も重要なことは脳神経回路の再構築を興そうとする強い意志を持つことであり、これなくしては何も起こらない。

 

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