【しげをサイエンス】ヒトの脳は半導体集積回路に置き換えられるか

2020年12月30日

購読者の皆様、本日も当コラムにごアクセスいただき誠にありがとうございます。

しげをです。

本日のテーマは『ヒトの脳は半導体集積回路に置き換えられるか学』というテーマで切り込んでいきます。

こちら、今年最後の投稿となりましたが、皆様今年はどのような1年だったでしょうか?激動の1年だったのではないでしょうか?私は自分の好きな人体科学についての学習が大幅に進んだ実りある1年だったと思います。

今年を締めくくる記事、早速見ていきましょう。

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1、ヒトの脳の長所

長所1

ヒトの脳の長所で一番に挙げられるのが、情報処理の基本となるシナプス数が圧倒的に多いということです。

まだ不明な点は多いのですが、脳細胞は1000億から2000憶もあり、脳細胞の中に生成されるシナプス数は数百兆ともいわれています。(一つの脳細胞が100以上のシナプス数を有している。)これほどのビット数を有するコンピューターは現代にも存在しておらず、この点でヒトの脳は情報処理能力(あくまでもポテンシャルであり、それを使いこなしているかどうかは問題としていない)という観点では世界最高のコンピューターと言えますね。

長所2

ヒトの脳の次の長所は驚異の柔軟性・可塑性(変化がそのまま残って、以前の状態に戻らなくなってしまうこと、針金を曲げて形がそのまま残り元の形に戻らなくなってしまう性質を神経回路に適用した用語)にあります。環境に応じて、脳はいかようにも神経回路を変化させその時に応じた最適の神経回路を発達させるので驚異の柔軟性・可塑性を持っていると言えるでしょう。

脳は神経回路を常にスクラップ&ビルド(破壊と生成)しており、必要でなくなった神経回路はシナプス消滅や神経細胞自体の消滅(アポトーシス)をとおして消えていく性質を持っています。

一方、新たに必要な回路は脳細胞の中にシナプスが形成され、他の脳細胞とシナプスで連結され新回路として機能していくようになるのです。さらに、何回も同じ回路を使うことにより回路自体が強化されていくようになっています。

脳の発達、進化、精神疾患(悪い意味における可塑性)などは脳神経回路のスクラップ&ビルドの結果もたらされたものです。

2、ヒトの脳の短所

一方で、もちろん弱点もあります。

短所1

ヒトの脳の短所における第一はその脆弱性であります。

短所1−1

特に、物理的外部荷重・衝撃に対する機械的強度の低さが目立ちます。

進化的にこの脆弱性を補うために頭蓋骨という保護を発達させたと思われるのですが、頭蓋骨が破損しない荷重においても脳はすぐに機能の変調をきたすほど、脆弱であることには変わりありません。

アメリカンフットボール、野球の打者などがヘルメットをかぶるのはこの脳の荷重に対する脆弱性からの保護を意図しているからです。一方でボクシング、ラグビーなど脳を保護しないまま行うスポーツもありますが脳の保護という観点からはまことに危険です。

短所1−2

脆弱性の第二に化学的脆弱性があげられます。

毒と呼ばれるものであるが、少量の化学物質で脳は全く機能しなくなるのです。

脳には血液脳関門と言って、血液中の化学物質のうち脳だけに必要なものしか脳内に取り入れないという機能がありますが、この関門を通り抜ける化学物質は多数あり人を死に至らしめるものもたくさんあるのです。

ドラグと呼ばれるものは、脳に機能する血液脳関門を通過した化学物質であり、長期的使用により脳は機能しなくなります。

短所1−3

第三に挙げられるのが、放射線に対する脆弱性です。

ロボットで有名な大阪大学の石黒教授が言っていたことでありますが、人類が将来宇宙に出る時人間の脳は太陽などから発せられる放射線に耐えられなくなり、人間の脳は有機物から無機物に置き換えられるだろうとのことです。

このように、ヒトの脳は機械的強度・化学的安定性・放射線安定性という3点で非常に脆弱であり、まさしく短所であると言えるでしょう。

短所2

ヒトの脳における短所の第二はその処理速度の遅さであります。

これは脳のシナプスにおける情報処理がイオン電導(シナプス間で機能する神経伝達物質やホルモンはイオン化した原子や分子であり、これらがシナプス間で移動することにより、情報伝達が可能となる)により行われていることに原因があります。

一方、コンピューターでつかわれる電子(光も使われる)は原子よりも1000倍以上も軽いためにより情報処理を行うための電子の移動速度は神経伝達物質よりもはるかに速く、結果としての情報処理速度も非常に大きいのです。

3、半導体集積回路のヒトの脳に対する優位点

以上、ヒトの脳についての長所・短所を述べてきましたが、集積回路がヒトの脳に置き換えられるかどうかはヒトの脳の短所を克服でき、長所を更に伸ばすことができるような半導体集積回路が製造できるかどうかにかかっています。

まず、ヒトの脳の短所を克服できるかどうかを検討してみましょう。

半導体集積回路はヒトの脳の短所を克服できるか

まず、半導体は基本的にSi(シリコン)が原料であり、ほかの物質例えば化合物半導体に変わるとしても所詮無機物です。

有機物であるヒトの脳に比較すると強度、化学的安定性、放射線安定性に対して何百倍も耐性がああります。また、それでも不足であれば貴金属のようなもので囲えば、化学活性物質と反応しないし、金属であるので放射線を跳ね返し内部に透過させることはないので、化学的にも放射線にも高い耐性を確保することが可能です。この点で、脆弱性という観点では半導体集積回路はヒトの脳よりもはるかに優れていると言えるでしょう。

また、処理速度についても半導体は電子(または光)を使用するので、イオン伝導体を使用しているヒト脳内のシナプス処理速度に比較してもはるかに高速情報処理が可能であります。

現時点においてヒトの脳の方がコンピューターよりもパターン認識などの情報処理速度が速い部分があるのは、シナプス数が多いことと、情報の並列処理(情報処理を同時に複数個所で行うこと)が可能であるからです。

しかし、近年、半導体の微細加工技術で半導体チップの間隔が数十ナノメーター(nm)になってきたことと、3次元にチップを積み重ねることで半導体集積度は大きく増大しており2040年代には半導体集積度がヒトの脳のシナプス数を超えコンピューターの情報処理速度がヒトのそれを超える(シンギュラリティと呼ばれている)とカーツワイルは予言しています。

従って、ヒトの情報処理速度特に並列処理速度をこえる半導体集積回路が出現するのはほぼ確実だと言われているのです。

つまり、ヒトの脳で短所であった①脆弱性 ②処理速度の遅さ は半導体集積回路で十分に解決可能であり、また、長所と思われていた③シナプス数の多さ も半導体微細加工技術と3次元積層技術により半導体集積回路には今後すぐに及ばなくなると言えます。

ヒトの脳でしか出来ないことはある?

それではヒトの脳が有する④神経回路のスクラップ&ビルド能力 は半導体集積回路で実現できるのでしょうか?

そもそもこれはハードウェアの問題ではなくソフトウェアの問題であります。

これについても、AI(人工知能)が発達してきており、外部環境に適用するようなソフトウェアを自主学習により自分自身の回路の中に作りだすことは十分に可能になってきています。

囲碁や将棋ソフトがヒトよりも優れていることはすでに実証済みであり、ヒトの思考の神経回路よりも優れた神経回路をコンピューター中にプログラム可能であることを証明したと言える。

また、ヒトが行っているような神経回路のスクラップ(消滅)はヒトでは使わない記憶やスキルに対応するシナプスが消えていくことを示しているが、半導体集積回路では自然に消えていくことはないと思われます。

何か、記憶などを消す必要があればそのようなプログラミングが働いて消すという機能が働くのであり、自然に消えていくことはないと思われます。

4、まとめ

以上のように、どう考えてもコンピューターの方がヒトの脳よりも情報処理という観点では優れており、悲しいかな”ヒトの脳は半導体集積回路に置き換えられるか”という問いに対しては、イエスと言わざるを得ないのです。。

但し、これは脳を情報処理装置とみなした時の話であり、脳はそれだけではないと私自身も言いたくなります。

でも、脳の情報処理以外の機能は何ですかと聞かれても、感情や感動も含めて情報処理であると言われるとそういうような気もしてくるのもまた事実です。

ヒトの脳とコンピューターの本質的な違いはもっと深く議論されて良いと思うのが私の持論です。

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