資産運用に必要なマーケット情報の見方・読み方・使い方

2020年9月26日

物に値段があるように、お金の世界にも値段があります。会社の持分を示す株式や、国や企業がお金を借りる際に発行する債券、円や米ドル等の通貨など、それらは刻一刻と取引され、価格が動いています。

金融や経済のこととなると難しく考えがちですが、野菜や果物、あるいは洋服などと同じで、基本的には需要と供給のバランスで値段が決まります。みんなが欲しがるものは値上がりしますし、誰も欲しがらないものは値下がりしていきます。

そんな金融相場の流れを読み取るには、さまざまな指標や数値に慣れておくとよいです。

 

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相場の見方

主要株価指数

株式を取引する市場は世界各国にあります。そして各国ともその市場全体の動きを示すような株価指数が存在します。日本では日経平均やTOPIX、米国ではNYダウやSP500が有名です。

指数ですからその算出方法によって数値の出方に癖があるものの、その国の株式市場の活況度合いをおおまかに捉えるには便利です。こうした指数は市場全体が上向きか下向きか、その国の景況度を測るには便利ですので、なるべく長期の時間軸で相場の流れを捉えるようにしましょう。

為替

国が発行する通貨も同様に、人気の有り無しがその価値を決めます。前提条件として財政状態や経済状況などその国の信用力が重要となりますが、近年では金融政策(金利低下や量的緩和等)によって通貨が市場に大量に出回れば供給過多となって値下がりするという関係が目立ちます。

リーマンショック以降、米国はQEと呼ばれる量的緩和を大々的に行い、米ドルを市場に大量放出した結果、大幅な米ドル安を招きました。アベノミクスでも日銀の黒田総裁による異次元緩和発動によって円は急落、この間、1米ドル70円台から120円台まで大きく動きました。なるべく長い期間のチャートを眺めるなどして、通貨価値の変動を大きな流れで捉えるとよいでしょう。

国債利回り

国が発行する債券を国債といいますが、債券とはつまりは借用証書のことで、いつまでにお金を返すか、いくら利息を支払うか、が決められています。国債を欲しがる人が増えると国債の価値は値上がりしていきますが、得られる利息額は決まっているので、実質の利回りは下がっていくという関係にあります。

国債の人気が上がれば利回りは低下し、国債人気が下がれば利回りは上昇します。たとえば国債が不人気になり利回りが上昇していくケースでは、景気回復で株式市場へ資金が流れたということなのか、国の信用が落ちて見放されたということなのか、不人気になった理由を正しく捉える必要があります。

チャート

チャートと呼ばれる過去の価格推移を示すグラフは、マーケットの流れを読み取り未来をイメージするにはとても便利なツールです。価格の動きを示す1つ1つの棒状のマークを「ローソク足」といい、赤いローソクは上昇、青いローソクは下落を示します。

そのローソク足1つが、1日の値動きを示しているものを日足、1週間の動きであれば週足、1ヵ月であれば月足といい、それぞれ短期投資、中期投資、長期投資の判断に向いています。ローソク足が表示されない場合は定時観測の価格をつないだグラフとなります。

◎ 日足:目先の値動きを追いかけたいときに有効。短期投資向き。

◎ 週足:半年程度の投資、特に株式投資に有効。中期投資向き。

◎ 月足:あらゆる投資対象の数年単位に及ぶ長期投資に有効。

以下は、日経平均株価の値動きです。2014年10月頃の急落~急騰(赤い帯の部分)がどのように映るのか、日足、週足、月足の違いを見てみましょう。

 

▼ 日足チャート

これまでの流れから一変、短期投資家としては損失覚悟で売り逃げてしまいたくなるほど大きな下落です。赤い線は25日移動平均線といって、過去25日間の平均価格を示していますが、その線を割り込むあたりが売却を考える1つのポイントとなります。

 

▼ 週足チャート

急落となってはいるものの、ここ1~2年の値動きからすると大騒ぎするほどのことではなく、静観できるレベルに見えます。赤い線は26週移動平均線ですので、おおよそ半年間の価格の平均値です。いったん、そこを割り込む水準にまで下落しましたので、気の早い投資家はそこで売り逃げていたことでしょう。

 

▼ 月足チャート

急落とはいえ月内の動きであったため、その後の急騰を含んでローソク足は上昇を示す赤色になっています。急落の足跡は下方向への赤い1本の線で示されています。赤い線は6ヵ月移動平均線ですから、週足の26週移動平均線とほぼ同一です。中期的には下落を示唆しかけたものの、長期的なトレンドは何も変わっていないことが見てとれます。

 

このように、見るチャートの期間(日、週、月)によって、相場の見え方が変わります。投資信託や、FXではない外貨投資など、長期的に資産を守り育てるタイプの投資では、細かな動きに翻弄されることなく、月足を眺めるなどして長いトレンドを捉えることが大切です。

 

金融政策の転換点が相場の転換点になりやすい

株式、為替、金利、いずれにせよ相場を長期的視野で眺めていると、数年単位での大きなうねりを感じることができます。これらは好況・不況の景気サイクルが影響を与えているわけですが、そうしたサイクルを生み出す原動力は国の政策にあります。

米国でいえばQEと呼ばれる「量的緩和」ですし、日本でいえばアベノミクスに油を注ぐ結果となった黒田日銀総裁による「異次元緩和」です。いずれも市場にお金を大量放出する金融政策ですが、低金利、通貨安、株高へとつながり、景気回復の道筋をつくり出しています。

やがて景気が良すぎてインフレ(物価上昇)が加速すると、市場に流れるお金の量を減らすために金利を引き上げます。米国の短期金利でいえばFFレートが、日本の長期金利でいえば10年国債利回りが、それぞれ注目される金利となります。

そうした政策の方針転換につながるものとして、国際的なパワーバランス、戦争、大統領選挙、エネルギー問題、各国の財政問題、等々、事が重大であるほど世界中の冨が、より安全なところへ、より収益期待の高いところへと、配置転換されていくことになります。ニュースや統計数値を眺めながら、地球上で大きな資金移動が起きているイメージが浮かぶようでしたら、それが相場の転換点かもしれません。

 

ニュースの見方

金融関係筋のコメントを確かめる

市場には為替や株式、各種統計に関するニュースが流れますが、投資においては現時点の数値を捉えることよりも、それによる未来への影響を予測することが大切です。

そのためには、各種の相場や統計数値の過去の推移と、それによる未来への期待値、マーケットを支配する予測、そうした過去情報の上にニュースとして現実の数値なり情報が入ってきて、あらためて未来予測を修正する、という脳内作業が行われていきます。ご自身で独自の見解がもてるようになるまでは、ニュースの中の専門家や金融関係筋がコメントを読むなどして、過去の経緯と現在の事実から未来を読み解くコツを掴みましょう。

一般投資家としては、あまりに短期的な相場の見方に振り回されることなく、中長期的な相場の流れを捉えることを大切に、その視点でニュースを眺める必要があります。

 

指標の見方

重要指標を定期的にチェックして景気の流れを読む

いまどの国の経済が、あるいは産業が、景気がよいのか悪いのか、そうした実態に対して国(政府や中央銀行)はどのような政策を行おうとしているのか、それらを見極めるためにも各種の経済指標発表にはマーケットの注目が集まります。

今現在の景気が悪くても、それに対して国が対策を打ち回復を狙うとする場合は、投資家はその回復力、成長力に期待してお金を投じることになります。逆に好景気が行きすぎて株価が高騰している場合は、下落警戒感から資金を引き揚げることもあります。投資家は常に一歩先を見据えて行動しますので、各種指標を点で捉えるのではなく、過去から現在そして未来へ続く線として捉える必要があります。

なお、いずれの経済指標・統計数値も、自国経済の成長や景気回復・拡大を示すものであれば、基本的にその国の通貨高・株高・金利高を招きやすいと考えます。米経済好調であれば米ドルも米株も上昇し、金利上昇の気運が高まります。日本においても然りです。

過去との対比で良い数値であれば、通貨高・株高・金利上昇を招きやすい

投資家や専門家は、それら経済指標が発表される前の未来予測に従って投資をし、発表と同時に軌道修正、つまりは投資の修正を行います。思惑が当った外れた、と一喜一憂するマーケットのイベントは、毎月ほぼ定期的に行われています。特に重要な指標をピックアップしておきますので、事前予想、発表数値、未来予測について、キャッチし、自らも考える癖をつけていきましょう。

ちなみに投資家が最も重視する指標が米国のFOMCと雇用統計です。長期投資家にとっては発表のたびに右往左往して投資方針を変更する必要はないのですが、FX取引など短期で通貨を売買するような投資家の場合は、これら指標発表前後での数%に上ることもある相場の荒れに翻弄されることになります。

FOMC【米国】

FOMCとは米国の金融政策を決定する最高意思決定機関です。およそ6週間ごとに年8回、FFレートと呼ばれる短期金利の誘導目標を含む声明文が発表されるとともに、3週間後には議事要旨が公表され、その内容が米経済の未来を占うとして注目されます。ケーススタディとして、2015年3月19日に行われたFOMCと、その前後での為替相場の動きを見てみましょう。

マーケットでは指標発表前に予測が飛び交い、市場コンセンサスと呼ばれる「気運」が醸成されます。発表前、発表、発表後、それぞれその気運にどう変化が現れるかが、相場の予想につながります。

例えば、

◎ FOMC発表前:米経済はこれまで通りの経済成長、金利も据え置き。
◎ FOMC発表 :米経済に慎重な見方、利上げのタイミングを延期する可能性も。
◎ FOMC発表後:早期の利上げを見込んでいた米ドル買いが剥がれ、米ドル下落へ。

このように、FOMC発表前の金利および経済見通しが、市場予想と乖離した場合に相場が動き出しやすいという特徴があります。

雇用統計【米国】

毎月第1金曜日に米国の労働環境、雇用情勢について発表されます。中でも「非農業部門就業者数」次いで「失業率」に大きな注目が集まります。

雇用統計前に発表される各種の景気指標を参考にしつつ市場コンセンサスが出来上がり、月に一度の雇用統計発表前は市場に緊張感が走ります。これらの統計数値は予想と乖離することが多いため、相場の混乱を招きやすいことも、マーケットが盛り上がる要因となっています。

日銀短観【日本】

日本の経済状況をもっとも包括的に知ることができるのが日銀短観です。日本銀行が四半期毎(4,7、10、12月)に発表する全国の大・中・小企業1万社へのアンケート結果です。

調査内容としては仕入価格や販売価格、売上、雇用、資金繰り、借入など多岐に渡りますが、とりわけ業況判断DIは、数値がプラスであれば景気は上向いていると判断してよいシンプルな指標ですから、チェックするのも簡単です。

GDP【すべての国】

経済規模を表す指標ですが、特に日本の場合、速報、確報、修正と3段階で数値が大きく変わることもあり、統計値としての信頼度は低めです。国全体の成長度合いを測るものですから、確報値を見て、大きな流れで景気の状態を捉えるようにしましょう。

鉱工業生産指数【日本、米国】

日本では月末、米国では毎月15日頃に発表されます。日本にせよ米国にせよ、その他の国々にとっても、まだまだ経済に占める工業の割合は高く、とても重要な産業であることは間違いありません。

生産、出荷、在庫、稼働など、鉱工業の様子が数値化されており、これら指標は景気を先取りしやすいといわれます。またそのほかにも、鉱工業分野では設備稼働率も重視されます。

自動車販売台数【米国】

毎月の月初に発表されます。自動車産業は裾野が広く、車をつくるために必要なパーツや電子部品を生産する会社、車を販売する会社、ローン会社、そして中古市場など、経済の影響度は計り知れないものがあります。

特に新車販売台数は、そうした裾野への影響があるため、とても重要な景気指標の1つであるといえます。米国は自動車社会ですし、ローンを組んで自動車が買えるということは未来の収入が安定的な見通しであることを示していますから、全体景気を見る場合の指標として、十分な価値をもっているのです。

チェーンストア売上高【米国】

米国のGDPの7割は個人消費が占めますが、その個人消費の動向をタイムリーにキャッチできるのがチェーンストアでの毎週の売上速報です。加えて、既存店売上高という指標が毎月第1木曜に発表されますので、より日常的な消費傾向を把握することができます。前月比、対前年同月比など、過去との比較で景気の流れを読み取るようにしましょう。

中古住宅販売件数【米国】

毎月25日頃、全米不動産業者協会(NAR)が発表します。新築よりも流通量の多い中古住宅の、在庫、販売価格、販売件数を把握することができます。米国では住宅を担保に借金をすることも通例で、住宅価値が上昇すると消費が促進される「資産効果」と呼ばれる現象が起こります。

個人消費が活発になれば景気も刺激されますので、住宅価格や売れ行きについての動向チェックは、米国経済を把握する上で欠かせないものがあります。

消費者信頼感指数【米国】

カンファレンスボードが毎月最終火曜日に発表する「消費者信頼感指数」と、ミシガン大の調査によって毎月第2金曜日に速報が発表される「ミシガン大消費者信頼感指数」の2種類があります。

カンファレンスボードによる調査は深い分析、ミシガン大による調査は広い分析といわれます。調査結果としての数値が上にも下にも大きく振れやすいので、事前予想と結果の違いに一喜一憂する短期相場への影響度が高いともいえます。

ISM製造業景況指数【米国】

毎月の月初に発表されます。製造業の主要400社に対し、新規受注、生産、雇用、在庫、入荷遅延比率、仕入価格、輸出入などの項目について購買担当役員へアンケートを実施、その結果が発表されます。特に重要な5項目を元に作成されるPMIというメインの指数は、50を超えるか超えないかによって景気の良し悪しを判断できるシンプルな数値で、市場の注目を浴びやすいといえます。

ISM非製造業景況指数【米国】

製造業はとても重要な産業ですが、非製造業、つまりサービス業はさらに大きな規模をもった産業です。米国では経済全体のおよそ70%を占めるといわれます。同じISMの景況指数でも、製造業よりも信頼度に欠けるといわれますが、数値が50を超えているかどうかをチェックするだけでも参考になります。

消費者物価指数【日本、米国、欧州】

日本では月末金曜日、米国では毎月15日前後に発表されます。インフレの最重要指標として、個人が購入する商品やサービスの価格変動をキャッチすることができます。アベノミクスでもインフレ率2%を目標としているように、緩やかな物価上昇は経済拡大のための好条件であるとされます。また、インフレが進行しすぎることは、お金の価値が希薄化することに繋がります。経済成長率や金利が高いとしても、インフレ率まで高くなってしまっては、投資する際にも注意が必要になります。

米国の指標チェックを習慣にする

以上、ご覧いただきましたように、ほとんどは米国の指標です。誤解を恐れずに言えば、やはり世界経済の中心は米国です。いまや世界経済は完全に繋がっています。かの大国での景気動向をキャッチすることが、世界はもちろん、日本の景気を読むためにも必要なことです。

そしてこれらの指標を定期的にチェックすることで、世界景気はいま「何色」なのかを感じ取ることができるようなります。投資家としてまた一歩、そのセンスが磨かれていくことになります。まずは興味への入口として、どれか1つの指標だけは必ずチェックしている、といった方法も有効です。米国のチェーンストア売上高にだけはうるさい、そんなチェック法でも、意外と効果があることを実感できるはずですので、ぜひお試しください。

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