気をつけて!リスクは隠されている。複雑な金融商品の罠。

2020年9月26日

「円安なら円で、円高なら外貨で戻ってきます」

こんな説明を銀行員や証券マンから聞いたことはありませんか?

スポンサーリンク


円で戻るか、外貨で戻るか、まるでギャンブルな金融商品

たとえば100万円預けた場合に、

  • 円高になったら1万2000ドルで戻ってきてしまう
  • 円安になったら100万円のまま戻ってくる

というようなことです。この説明を聞いて、「どっちにしろ酷いな」、と思った方は、金融リテラシーが高いですね。よく考えれば実に簡単なことなのですが、意外と多くの人が、そのリスクの大きさに気づきません。この金融商品は2重通貨定期預金(DCD=デュアルカレンシーデポジット)と呼ばれ、金利が高い代わりに為替リスクを負うという特徴を持ちます。

なるほど2重通貨というくらいだから、リスク(為替リスク)もリターン(金利)も円預金と外貨預金のちょうど間くらいなんだろうな、と思ったら大間違い。金利はなんと外貨預金よりも高いのです。ということはつまり、「投資の真理」からすれば、外貨預金よりもリターンが高い分だけ、外貨預金よりリスクも高い、ということになります。

 

ではまず、金利を見てみましょう。ある時期のある銀行における、円預金、外貨預金、2重通貨定期預金の金利比較です。その違いは歴然としています。いずれも1年間預けた場合の金利です。

2重通貨定期預金の「円・豪ドルタイプ」というのは、当初、円で預けておいて、円高になったら豪ドルで戻ってくるタイプの預金であることを示しています。「-1円」というのは、1円幅までなら円高になっても円のまま戻ってきますよ、という特約が設定されていることを示しています。

高い金利の代わりとして、高いリスクを負わされている

高金利に目が行ってしまう気持ちはわかります。ただ、それでは「金利さえ高ければ客はやってくる。他のリスクはうまいこと隠しておこう。」などと考えている(かもしれない)銀行や証券会社の策略にまんまと嵌ってしまいます。

そもそもここでいうリスクとは何でしょうか。そう、為替リスクです。車や電機メーカーなど輸出産業を基準に報道されるとき、「円高は悪だ」となりますが、通貨が高くなることは輸入産業や消費者にとってはよいことです。逆に円安になってしまうと、購買力が下がることになりますので、いわば円の「宝の持ち腐れ」現象が起きることになります。さて、この2重通貨定期預金、実はそうした「通貨の持ち腐れ」と「高金利」をセットにした預金商品なのです。

円安でも円高でも、たいてい負ける仕組み

次の3つの図は、円預金、外貨預金、2重通貨定期預金、ぞれぞれの為替リスクと為替リターンを簡易に表したものです。お金を預ける立場から見て、為替で儲かる「勝ち」は赤色、為替で損する「負け」は青色で示しています。

円預金はどこまでいっても円のままですから、円高でトクをします。逆に円安の場合は額面が変わらずとも、密かに「宝の持ち腐れ」を起こしていることになります。一方、外貨預金はどこまでいっても外貨ですから、外貨高(つまり円安)でトクをします。

ところが2重通貨の場合は、ご覧のように、

  • 円安になったら円で戻る
  • 外貨安になったら外貨で戻る
  • 特約で決めた範囲までの円高の場合のみ、円で戻る

と、ほとんどの場合、安くなった通貨でお金を返してもらうことになるので、非常に不利です。

80円が76円や84円になれば5%の変動ですから、わずかな動きで金利による利益が吹き飛んでしまいます。さらにもう一段奥深いカラクリには、金融市場では「それくらい変動するだろう」と見られている、ということがあります。

為替が変動すれば儲かる可能性がある。でもその可能性を捨てて(捨てるどころか、ほぼ確実に為替で損をするであろう契約をして)、その分、金利を高くしてみせる、そんなトレードが裏でなされているということなのです。(本当は金利に換算すると10%分くらいは為替が変動すると考えられていますが、見た目の金利との差分は、金融機関の手数料として知らぬ間に搾取されています。)

おいしそうな話にはリスクや手数料が必ず隠れている

ややこしくてわかりにくい説明で恐縮ですが、このようにわかりにくくすることで顧客を騙そうとしているのではないかと勘繰りたくなるくらい、複雑な商品が増えてきています。こうした商品を仕組預金とか、仕組債などと呼びます。「仕組」という文字を見たら、ぜひ注意するようにしてください。

円に為替リスクがないなんて、誰が嘘をついた?

円が円のままである限り、「為替リスクがない」と、誰からともなく教わり、また、100万円が100万円のまま戻ってくることを「元本保証」と謳う一方で、ひとたび外貨に交換すると「元本保証ではない」と定義づけられている、そうした霞ヶ関発信?の言葉に操られるようにして、日本人の金融リテラシーはどんどん下がっていった、あるいは麻痺していったのではないかと感じることがあります。

日本に頼りすぎない、日本を信じすぎない

数年前、週刊ダイヤモンドで、「日本を見捨てる富裕層」という特集が組まれていました。円高の今であれば海外資産を安く購入・投資できる、そして政情不安、財政不安、構造不況、今後の円安リスクなどを考えて、海外への脱出も辞さない、という論調でした。

たしかに富裕層が海外、特にシンガポールや香港に拠点を移したという話は数年前からよく聞きますし、周囲にも何人かいます。彼らは「円」に縛られることなく、資産価値を維持するためにはどの通貨がよいのかを、金融機関(プライベートバンカーなどの営業)に任せっきりにすることなく、いつも自分自身で考え、行動しています。

彼らの目にはもはや、「円」や「日本」はリスクとしか映っていないのかもしれません。

スポンサーリンク